2012年10月31日水曜日

溶接部品の設計 ワンポイント(歪みの低減)

設計段階で溶接の際に発生する歪みを抑える事ができる方法を幾つか挙げます。

・溶接の深さを浅くする。
・溶接のビード幅を細くする。
・ワークを大きくする。
・溶接箇所を散らす。
・ワーク間の隙間を減らす。

〇溶接深さ、ビード幅
ワークに入る熱量を抑えることは、非常に効果があります。
電子ビーム溶接では、溶接深さが安定していますので必要分以上に
深くする必要はありません。
また、溶融部は溶けている間は膨張し、冷えると収縮します。
このため、大きく溶かすと冷えた際に引っ張られて歪みが大きくなります。

〇ワークを大きくする
単純に全体の剛性を強くして歪みに強くする他に、微細なワークでは
ワークの熱容量を増やす事によって、熱上昇を抑えることができます。
特に銅やアルミなど熱伝導の良いワークで効果的です。

〇溶接箇所を散らす
近い場所に溶接部が集中すると、曲がりが大きくなります。
できる限り溶接部を離した方が局部的なゆがみを防げます。

〇ワーク間の隙間を減らす
隙間部分にはワークが溶け込みますが、その分は周りの母材が
溶けて入り込んだものです。ビード幅と同じように大きく溶かすと
大きく歪みます。

2012年8月11日土曜日

溶接部品の設計 ワンポイント (タングステン)

電子ビーム溶接ではタングステンの溶接が可能です。

他の溶接方法では困難ですので、溶接構造を検討している場合は、
電子ビーム溶接を念頭においての設計が必要です。

設計時のワンポイントですが

溶接回数を極力減らす。

これが最も重要です。
理由は、タングステンは再結晶温度以上になると、どんどん結晶粒が
粗大化してしまい、脆くなるからです。

下の写真は、条件設定で使用した1mmのタングステン板ですが、
3回ビームを照射した後、机に軽くぶつけたら割れてしまいました。
もちろん、熱を加える前はかなりの衝撃でも割れません。


また、タングステンは熱処理による靭性の回復が難しい材料ですので、
強度を確保するには熱を入れない工夫が必要です。

2012年8月8日水曜日

2012年7月24日火曜日

ダッチオーブン 仮取っ手

いい取っ手の形が決まらなかった為、Tig溶接の職人さんに仮の取っ手を付けてもらいました。



最終的には、取っ手は溶接構造で本体に直付けを予定しています。

2012年7月4日水曜日

SUS304製 7.5inc 極厚ダッチオーブン

以前製作したダッチオーブン。
厚みにこだわった品だけに非常に重く、10incは大き過ぎて使い辛いとのことで、
7.5inc(内径195)板厚8.5㎜ のダッチオーブンを製作しました。



10incを製作した際に学んだ事を踏まえ、底板は12㎜厚を1パスで貫通溶接!
仕上がりがかなりいい具合だったので、6月21日からの機械技術要素展に
出品してみました。

これからのキャンプシーズンで使い倒します。

2012年6月2日土曜日

水冷ワークの溶接について

電子ビーム溶接は、銅、アルミの溶接が得意であることから、
水冷ワークの溶接に良く用いられています。

写真のワークは素材はA5056。本体に水路を掘った後、2㎜の蓋を
かぶせて電子ビーム溶接を行なっております。
















水冷ワークは熱伝導性の良い材料を使うため、溶接が難しいのに加え、
蓋が薄いので、熱が入ると歪みやすいという問題があります。
局所的に大きな熱量を入れることができる電子ビーム溶接は、非常に
適した溶接方法です。

2012年5月30日水曜日

溶接部品の設計 ワンポイント(開先)

電子ビーム溶接やレーザー溶接では、ビームが深くまで届くため(キーホール溶接)、
厚い板であっても、Tigやアーク溶接のように開先を取りません。 
 開先を取ったからといって、溶接できないわけではありませんが、精度に与える影響
が大きいので、基本的に取らないと思った方がいいでしょう。

 理由としては、溶けた金属は再び固まる際に、周りの組織を引っ張りながら
収縮します。図のように開先があった場合、溶けた金属が固まると、引っ張った
力がワークをV字に曲げる方向へと働くため、フラットな突合せ面よりも歪みが
発生する量が増加するわけです。
 ここで注意(ワンポイント)なのですが、よく図面に”指示の無い角はC0.5”などと
図枠フォーマットとして記入がされている場合、指示を忘れてしまう事があります。
板厚にもよりますが、面取りも開先と同じ効果がありますので、指示は忘れずに。

2012年5月28日月曜日

セラミックの溶接について

よくセラミック系ワークについて、溶接の問い合わせが来るのですが、
電子ビーム溶接ではセラミック系の溶接はできません


ビームを照射した場合どうなるのか? なのですが
引用 http://www.wallpaperlink.com
まさに火山の大爆発!
真っ赤なスパッタをあたり一面に飛ばし、その痕はクレーターとなってしまいます。

表面処理は見過ごしがちですが、窒化、酸化などで表面にセラミック膜が形成
される場合があります。必要な場合、溶接後に処理をするようにしてください。

例 アルミの場合アルマイトは溶接できませんので、溶接後の処理になります。

2012年5月23日水曜日

溶接部品の設計 ワンポイント

.comのサイトにも書いてありますが、電子ビーム溶接はチャンバー内での溶接が
必須です。つまりセッティングしたら、もう手が出せません。このため、レーザーなど
の高速溶接にも言えますが、溶接する2つの部品をどう押さえておくかが非常に
大事になります。

 円筒形状の場合、抑え面に対し側面を溶接するような設計が基本になります。

2012年5月21日月曜日

ステンレス製 ダッチオーブンを溶接で作る!

日中の気温も上がり、アウトドアシーズンになってきました。
気持ちのいい自然の中で食べる料理はおいしいですね。

 アウトドア料理といえばダッチオーブンなのですが、鋳鉄製は錆びるので嫌だし、
ステンレス製は高い!という事で、手持ちの材料からステンレス製のダッチオーブンを
作ってみました。

 市販のステンレス製ダッチオーブンが板厚4㎜程度なので、倍の8㎜を目標に製作。
パイプに10㎜の底板を電子ビーム溶接。溶接後レース加工で完成。(10インチサイズ)
実際に焚き火で使用してみました。


(焚き火台は地元スノーピークさんの焚き火台Mを使用。)

 感想としては、通常使用できそう。
板厚を4㎜から8㎜に変えた効果としては、ステンレス製ダッチオーブンの弱点と
なっている、局部加熱による焦げが、ある程度防げると思います。
 加熱後のゆがみも見当たらなかったので、取っ手等を付けて使用しやすく
したいと思います。

 問題点としては、蓋が軽く(3.5Kg)蒸気によってパタパタしてしまいました。

2012年4月25日水曜日

電子ビーム溶接事例 (パイプ-フランジ)

パイプ(SUS304 t0.8mm)をフランジに挿入後、スミ部を溶接する内容でしたが、
パイプ肉厚が薄いので、極力はめあいの隙間を減らす必要がありました。
 社内の旋盤エキスパートさんに加工精度を上げてもらい、現物合わせで
隙間0.02として頂きました。

 薄物の溶接では、0.01mm単位の精度で溶接位置を合わせるので、広い隙間は
厳禁です。また、面取り等もNGとなることも多いので、設計段階でお問合せ下さい。

2012年4月3日火曜日